今回は東大院機械工学専攻平成28年熱力学の大問IIを解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・非定常熱伝導
・熱エネルギーバランス
・フーリエの法則
・ニュートンの冷却法則
・無次元数(フーリエ数、ビオ数)
解答本文
無次元数に熱エネルギーバランスと東大院の院試で重要なもの詰め合わせたような問題なので押さえておきたい一問です。個人的に結構良問だと思っていて好きな問題です。是非解いてほしい。
(1)熱エネルギーバランスを考える問題
球の熱量の時間変化は球の体積をVとすると
となります。次に熱移動による熱量の増加量を考えます。球全体の温度が一様と仮定しているということは温度勾配がないので、球内部の熱伝導は考慮しなくていいです。なので考慮するのは熱伝達による移動のみとなります。熱伝達による熱移動量はニュートンの冷却法則より球の表面積をAとすると
となります。球内部の熱エネルギーバランスを考えると
(熱量の時間変化)=(熱移動による熱量の増加量)
が成立するので球が熱伝達によって受け取る熱量と球内部の熱量の時間変化が等しくなります。よって球の温度Tが満たす微分方程式は
となります。境界条件は初期温度がT0なので
となります。
(2)微分方程式を解く問題
式(I)を変形して
ここでt=0でT=T0なのでC1は
なのでTは
となります。ここで熱伝達率などの諸量を代入すると
なのでTは
(3)グラフを描く問題
式(III)にt=100とかt=200の値を代入してみてそれっぽくグラフを描きましょう。
t=100とt=200のときのTのおおよその値はそれぞれ
なので温度の時間変化を図示すると下のようになります。
t=100 sで54 ℃なので大体その前らへんで50 ℃に達すると考えて、おおよそt=90 sのときくらいと読み取ればいいんじゃないかな(適当)
ちなみに関数電卓で計算すると50 ℃に達するのはt=94.001 sくらいらしいです。
(4)熱エネルギーバランスを考える問題
(1)と違って今度は球内部の温度分布を無視できない場合の問題です。つまり内部の熱伝導を考慮しなければなりません。
東大院では頻出の熱エネルギーバランスの問題って結局どういうことなのかがわかりやすい問題なのでしっかり押さえておきたいところです。大体本問のように検査体積を設定し、そこに対しての熱のバランスを考えて方程式を立式することをやらされます。慣れが必要なのでしっかり練習しましょう。
ではさっそくやっていきましょう。まず下図のように内側の半径r、厚さdr(drは微小)の球殻を検査体積とします。
この球殻の体積は2次の微小量を無視すると
となります。これより検査体積内の熱量の時間変化は
となります。次に熱移動による熱増加量を考えます。伝熱量の向きを球殻の外側に向かう方向を正とすると内側から流入する伝熱量はフーリエの法則より
外側に流出する伝熱量はdrが微小なので
となります。よって検査体積内の単位時間当たりの熱移動による熱量の増加量は
エネルギーバランス式は
(熱量の時間変化)=(熱移動による熱量の増加)
となるので式(IV)と式(V)を連立すれば温度Tがみたす微分方程式は
となります。ここで、aを熱拡散率
とすれば上の微分方程式は
と変形できます。境界条件は球の中心で温度が連続でなければいけないことから
表面での熱流束において
(5)方程式を無次元化する問題
として式(VI)と境界条件を無次元化していきます。ぶっちゃけ計算するだけです。結果は
となります。ただしここでF0、Biはそれぞれ
です。それぞれフーリエ数とビオ数という名称がある無次元数です。
それぞれの説明を以下に簡潔に示しておきます。
・フーリエ数
フーリエ数は固体内部の保有熱量に対する固体内部の熱伝導量の比率を表す無次元数です。つまり固体に蓄えられる熱量のうち熱伝導で伝わる熱量の割合を表します。
・ビオ数
ビオ数は固体内部の熱伝導量に対する固体表面からの熱伝達量の比率を表す無次元数です。
(6)ハイスラー線図を用いて時間を求める問題
無次元の中心温度およびビオ数をそれぞれ計算すると
となるのでハイスラー線図を参照すればフーリエ数はおおよそ
と読み取れます。これから時間を求めると
となります。100℃のお湯で13分ゆでればゆで卵になると考えると結構妥当な気がするので多分合ってるんじゃないかな?
(7)結果が大きく違う理由を考察する問題
(3)と(6)の結果を比較すると球内部の温度分布が存在する場合の方が8倍以上時間がかかることがわかります。この理由はビオ数に注目するとわかりやすいと思います。
(6)で計算した通り温度分布が存在するときのビオ数は10であり1よりもはるかに大きい値となっています。ビオ数の物理的意味を考えれば、固体表面からの熱伝達量に対して固体内部の熱伝導量がはるかに小さいということになります。つまり同じ熱伝達量でも熱伝導によって熱が運ばれるにははるかに時間がかかるわけです。なので中心温度が50℃になるまでにも時間がかかります。
ちなみに参考程度に書いときますが、温度分布がほぼ無視できる(温度勾配≃0)場合はフーリエの法則より熱伝導率は無限大に近付きます。このときのビオ数を計算するとビオ数は0に限りなく近い値であることがわかります。つまり(1)のように温度分布を無視する集中熱容量法を適用できるのはビオ数が0に近いくらい小さいときであるということが言えます。なんかわかりにくい文章になって申し訳ないですが一応知っておいてほしいので書きました。
というわけで長々と書いてきましたが解答は以上です。最後まで読んでくれてありがとうございました。
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