今回は東大院機械工学専攻平成22年熱力学の大問Iを解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・冷凍サイクル
・断熱過程
・等圧過程
・冷凍機の成績係数
・断熱効率
解答本文
出題頻度の高くない冷凍サイクルに関する問題です。T-s線図まで丁寧に載せてくれているという近年あまり見られない優しさがあふれる出題となっています。作動流体の飽和蒸気および加熱蒸気は理想気体で近似できるとありますが、他の過程ではこれは成り立たないので気を付けましょう。
(1)各状態のT-s線図に記入する問題
1→2は断熱圧縮なのでエントロピーは変化せずに、温度が上昇します。よって右側の直線の始点と終点に1、2を記入します。冷凍サイクルは半時計周りであることを考慮してその他の各状態をT-s線図に記入すると下図のようになります。
(2)圧縮機の仕事量を求める問題
状態1の時の温度、圧力、比エンタルピーをTi、Pi、hiとします。状態1から状態2は断熱変化なので
が成立します。これよりT2は
開いた系のサイクルなので圧縮機の仕事w12は開いた系における熱力学第1法則から
となります。
(3)圧縮機の仕事量を求める問題
外部に熱を放出するのは2→3の過程です。ここで2'を2→3の等圧線と飽和蒸気線の交点とすると2→2'での放熱量q22'はT2'=T3より
2'→3の過程での放熱量は蒸発潜熱rと等しいので、2→3での放熱量q23はこれらを足し合わせて
となります。
(4)冷凍機のCOPを求める問題
外部から熱を奪う過程は4→1となります。この過程は等圧過程なので外部から奪う熱量q41は
3→4の過程は等エントロピー変化なのでh3=h4が成立します。よってq41は
これらより冷凍機のCOPは
T1はP=P1の等圧線と飽和蒸気線の交点における温度なので、P1が決まれば決まります。また、T3はP=P2の等圧線と飽和液線の交点における温度なので、P2が決まれば決まります。また、cpおよびrは作動流体によって決まるのでCOPを変化させるのはP1とP2のみであるとわかります。
(5)断熱効率が1未満の時のT-s線図を描く問題
圧縮機の断熱効率ηの定義は
なので、これが1より小さいとき実際の仕事は増加します。このときの圧縮過程の終了時点を状態2''とするとエントロピーが増加し、
となるのでこのときの冷凍サイクルのT-s線図は下図のようになります。
以上で解説は終わりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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