今回は東大院機械工学専攻平成26年熱力学の大問Iを解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・オットーサイクル
・断熱過程
・ポリトロープ変化
・分子運動の自由度と比熱比の関係
解答本文
オットーサイクルの問題です。H19、H29、H30でも出題があるので東大院はオットーサイクルが好きなようです。出たら解けるようによく練習しておきましょう。
さて、この問題ですが(6)は正直あんまり自信ないです。ですが参考になるかもしれないので考えたことを書いておきます。
(1)オットーサイクルの熱効率を求める問題
オット-サイクルにおいて熱のやりとりがあるのは状態2から3のプロセスと状態4から1のプロセスです。以下、状態iでの温度にはiの下付き文字をつけて表すこととします。
状態2から3のプロセスにおける吸熱量Q23は定積過程より定積比熱をCvとすると
状態4から1のプロセスにおける放熱量Q41も同様に定積過程なので
となります。次に状態1から2のプロセスは断熱過程なので
が成立し、T2は
状態3から4のプロセスのプロセスも断熱過程なので同様にするとV3=V2、V4=V1なので
が成立します。これからT4は
これらから式(Ⅰ)および式(Ⅱ)はそれぞれ
とできます。これよりオットーサイクルの熱効率ηは
と求まります。
(2)オットーサイクルT-S線図を描く問題
解説の都合上、先にT-S線図を示しておきます。それぞれの過程についてみていきましょう。
状態1から状態2は断熱圧縮過程なので、外界から仕事をされます。これと熱力学第1法則から内部エネルギーが上昇する、つまり温度が上がりますね。また、断熱過程ではエントロピーが変化しないため、T-S線図ではS軸に垂直な直線になります。以上よりこの過程は上の図のように描けます。
次に状態2から状態3の定積加熱では熱力学第1法則から温度が上がるので上の図のように描けます。
状態3から状態4の断熱膨張過程では外部へ仕事をするので、熱力学第1法則から温度が下がります。なのでT-S線図上では上の図のように描けます。
次に状態4から状態1の定積冷却では熱力学第1法則から温度が下がるので上の図のように描けます。
最後にa)~c)との対応を示すと
a) : 状態1から状態2の断熱圧縮過程
b) : 状態2から状態3の等積加熱過程
c) : 状態3から状態4の断熱膨張過程
となります。
(3)外界になす仕事を求める問題
状態3から4は断熱過程なので
が成立します。これからPは
よって外界になす仕事W34は
(4)ポリトロープ変化で膨張する場合の損失を求める問題
状態3から4の膨張過程がポリトロープ変化のときは
が成立するのでPは
なのでこの膨張過程で外界にする仕事W34’は
損失がない場合は熱力学第1法則から
なので損失は仕事の差を考えれば
と求まります。
次にP-V線図にこの膨張過程を図示します。まず、膨張過程が断熱のときの膨張後の圧力P4は
ポリトロープ変化後の状態を4'、状態4'での圧力をP4'とすると
となります。これとn<κおよび
を考慮すると
となります。よってこの膨張過程をP-V線図上に図示すると赤線のようになります。
(参考)ポリトロープ変化について
ポリトロープ変化はnの値によって以下のようにさまざまな状態変化を表すことができます。
n=0のときは定圧変化
n=1のときは等温変化
n=κのときは断熱変化
n=∞のときは等積変化
なぜn=∞のときは等積変化を表すのかを軽く示しておきます。
Cを定数とすると
両辺の1/n乗をとると、
これよりn=∞のとき
となって定積変化を表すことがわかります。
(5)酸素の比熱比を分子運動の自由度から求める問題
この問題を解くには分子運動の自由度νと比熱比κの関係
を用います。これを使う問題はH19、H29、H30と結構出てるので覚えておいてください。温度が十分に低いことから分子の振動は考えないとすると、酸素は2原子分子なので自由度は分子の並進運動の3と、回転運動の2の合計5です。なので酸素の比熱比は
と求まります。
(6)燃料ガスと酸素の割合を変化させたときに熱効率がどう変化するかを考える問題
完全燃焼時に燃料ガスがx[mol]あったとします。ここから混合ガスの全モル数を変えずに、燃料ガスの量を減らし、酸素の量を増やすので、この変化させたモル数をΔx(>0)とすると燃料ガスのモル数はx-Δx[mol]、酸素のモル数は全モル数を変えないので
となります。ここで化学反応式よりx-Δxの燃料ガスと反応する酸素のモル数は
となるので燃焼後に余る酸素のモル数は
となります。また化学反応式の係数を考えると、燃焼後のガスにおいてCO2は
H2Oは
ずつ存在することがわかります。なので燃焼後の全モル数は燃焼後に余る酸素のモル数を加えれば
となります。また、ここで完全燃焼時についても燃焼後の全モル数を考えると、化学反応式より酸素が余らないため
となります。よって混合ガスの全モル数を変えずに燃料ガスの量を減らし、酸素の量を増やしたことによる燃焼後のモル数の変化は
ここでm≧1なので燃焼後の全モル数は減少することがわかります。
燃焼後の全モル数が減っただけでなくCO2は
H2Oは
だけ燃焼後のモル数が減っていることがわかります。しかし、酸素は燃焼後において
だけ増加しているため、燃焼後における存在割合は大きくなっています。ここで、問い(5)で用いた
から酸素は燃料ガス、CO2、H2Oと比較して比熱比が大きいのでこの存在割合が増加することによって燃焼ガスの比熱比は大きくなると考えられます。これと問い(1)で求めた熱効率の式から比熱比κが大きい方が熱効率は上昇するので、題意のように酸素と燃料ガスの量を変化させると熱効率は上昇すると考えられます。
以上で解説は終わりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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