意識他界系大学院生のクソブログ

院試が終わったので体験談だったり解説をゆったりと書いていこうかなと思っています。院試関係ない日記も書きます。

【院試解答】東大院機械工学専攻H30熱力学I

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今回は東大院機械工学専攻平成30年熱力学の大問Iを解説したいと思います。

ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。

なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。

問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。

 

 

 

問題を解くのに必要な知識

・オットーサイクル

・断熱過程

・等積過程

・等圧過程

エントロピー

・分子運動の自由度と比熱比の関係

解答本文

オットーサイクルの問題です。H19、H26、H29でも出題があるので東大院はオットーサイクルが好きなようです。出たら解けるようによく練習しておきましょう。

(1)断熱過程における関係式を導出する問題

状態1から状態2の変化は断熱変化なので、熱力学第1法則から

が成立します。これと理想気体の状態方程式

および

から式(I)は

と変形できます。積分定数をCとして両辺を積分すると

なので

が得られます。ただし、C’=e^Cなので定数です。よって求めるTとVの関係は式(Ⅱ)で、aは

(2)状態2の温度を求める問題

状態1から状態2において式(Ⅱ)を用いると

これよりT2は

と求まります。

(3)状態2から状態3の変化で気体が得る熱量を求める問題

状態2から状態3の変化は等積変化なのでQ2→3は

(4)状態3のエントロピーを求める問題

状態1から状態2は断熱変化なので、エントロピーは変化しません。状態2から状態3は等積変化なので、この過程におけるエントロピー変化ΔS23は

と求まります。よってS3は

(5)オットーサイクルの熱効率を求める問題

外部との熱のやり取りがあるのは状態2から状態3の過程と、状態4から状態1の過程です。Q2→3は問い(3)で既に求めているので状態4から状態1の過程について考えていきましょう。

まず、T4を求めるために状態3から状態4の変化を考えます。この変化は断熱変化なので式(Ⅱ)を用いて

となるのでT4は

次に、状態4から状態1は定積変化なのでこの過程で作動気体が放出する熱量Q4→1は

以上から熱効率ηは

(6)作動気体の種類によって熱効率がどう変化するかを考える問題

気体の種類を変えるとオットーサイクルの熱効率がどうなるか問うというもはやおなじみの問題ですね。この問題に解答するために式(Ⅵ)を変形しておきます。

まず、定圧モル比熱をCPとすると理想気体のマイヤーの関係式

が成立します。これと比熱比κの定義

から定積モル比熱は

なので

よって式(Ⅵ)は

と変形できます。この式から比熱比が大きいほど熱効率が高くなるとわかります。

それでは準備ができたところでそれぞれの気体の比熱比を求めていきます。

そのために比熱比κと分子運動の自由度νの関係式

を使います。ヘリウムは単原子分子なので分子運動の自由度は3、窒素は2原子分子なので分子運動の自由度は5となります。よって上の式を用いるとそれぞれの比熱比は

これよりヘリウムの方が比熱比が大きいとわかるので、ヘリウムを作動気体として用いた方が熱効率は上昇することがわかります。

(7)排気過程においてピストンがする仕事を求める問題

ピストンがする仕事は気体がする仕事と符号が異なるため、W4→Aは

となるので、P4を求めていきます。

排気および吸気を考える前の元々のオットーサイクルにおいて状態4から状態1は等積変化だったので

が成立します。これと式(Ⅳ)から

ここでP1は状態1における理想気体の状態方程式より

なのでP4は

これを式(Ⅷ)に代入してW4→Aは

と求まります。

(8)吸気・排気過程ありサイクルの熱効率を求める問題

状態4からAは等圧冷却、状態AからBは等積冷却、Bから1は等圧加熱なので吸気・排気過程ありのオットーサイクルのT-S線図は下図のようになります。

T-S線図上では等積曲線の傾き>等圧曲線の傾きになることに注意してください。

熱効率η'は

で表されます。状態iからjの過程における熱量の絶対値をQijとすると

となります。ただし、Q2→3に関しては既に問い(3)で求めていますが、再掲して式(Ⅻ)としています。

T4は既に式(Ⅳ)と得られていますので、TAおよびTBを求めてきましょう。

状態4から状態Aは等圧変化なので

となるのでTAはこれと式(Ⅳ)から

次にTBを求めます。状態Aから状態Bは等積変化より

なのでこれと式(Ⅳ)、(Ⅸ)、(Ⅹ)からTBは

これらを式(Ⅻ)~(XV)に代入すると

となるのでこれらを式(Ⅺ)に代入すれば熱効率η'は

と求まります。解答には関係ありませんが、普段見慣れているκが含まれている形に書き直しておくと

となります。

 

これでいいのかな?吸気・排気過程は半時計周りなので外界になした仕事は負になって熱効率はηよりも下がっていると考えられますが、これって下がってるんですかね?まあいいか。

(補足)T-S線図上で等積曲線の傾き>等圧曲線の傾きとなる理由

等積過程において

が成立するので、これを変形するとT-S線図上での等積曲線の傾きは

次に等圧過程において

が成立するので、これを変形するとT-S線図上での等圧曲線の傾きは

CP>CVよりT-S線図上での傾きは等積曲線>等圧曲線となります。

 

以上で解説は終わりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 


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