意識他界系大学院生のクソブログ

院試が終わったので体験談だったり解説をゆったりと書いていこうかなと思っています。院試関係ない日記も書きます。

【院試解答】東大院機械工学専攻H24熱力学II

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今回は東大院機械工学専攻平成24年熱力学の大問IIを解説したいと思います。

ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。

なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。

問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。

 

 

 

問題を解くのに必要な知識

フーリエの法則

ニュートンの冷却法則

・熱通過率

・熱抵抗

・熱エネルギーバランス

 

解答本文

いつも通り熱エネルギーバランスを考える問題ですが、工夫が必要なところがあります。計算するだけの問いを除けば熱エネルギーバランスの練習問題としてはなかなか良問だと思います。あと個人的に設定が身近な感じで好きな問題でもあります。

今回は定義式まで与えられているので特に知らなくても解けますが、ちょろっと熱抵抗が出てきます。これについては下の記事を参照してください。

(1)総括熱抵抗の式を示す問題

紅茶の温度をT、マグカップ内面の温度をTin、マグカップ外面の温度をToutとすると伝熱量Qは

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と3通りに表せます。式(1)~(3)より

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これらを足し合わせると

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となるので熱通過率Kおよび熱総括抵抗Rは

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と求まります。

ついでに後の解説の都合上それぞれの熱抵抗を

としておきます。

(2)熱エネルギーバランスを考える問題

下図の点線のようにマグカップを取り囲むような検査体積を考えます。

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紅茶の単位時間あたりの熱量変化は

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となります。次にマグカップのふたは断熱されているのでマグカップからの熱移動はマグカップ側面から大気への熱移動のみとなります。このマグカップから放出される熱量は

なので熱バランス式は

となります。これを変形すると

これを積分定数をC1として解くとTは

ここでt=0のときT=T0なのでC1は

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これよりTは

と求まります。

(3)計算するだけの問題

とにかくゴリゴリ計算するだけです。単位に気をつけて計算しましょう。

フィッテングの式の時間tの単位が分であることに注意して式(11)とフィッティングの式の指数部分を比較すると

が成立するのでKは

よって総括熱抵抗Rは

次に、熱伝導抵抗Rλは式(9)より

マグカップから大気への熱伝達抵抗Rh2は、紅茶からマグカップへの熱伝達による熱抵抗が無視できることから

と求まります。よってh2は式(10)から

(4)熱エネルギーバランスを考える問題(発展)

まず、下図の点線のようにマグカップを取り囲む検査体積をとります。

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紅茶の単位時間あたりの熱量変化は

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次にマグカップのふたは断熱されているのでマグカップからの熱移動はマグカップ側面から大気への熱移動のみとなります。このマグカップから放出される熱量は水の温度をTwaterとすると

なので熱バランス式は

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となります。これだけではTとTwaterの関係がわからないためこれを解くにはもう一つの方程式が必要となります。

 

もう一つの方程式を求めるために下図の点線のようにマグカップとボウルをあわせたような検査体積をとります。

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紅茶およびボウルに入っている水の中の単位時間あたりの熱量変化はそれぞれ

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となります。ここでマグカップのふたとボウルは断熱されているので検査体積と外部の間の熱移動はありません。よって熱バランス式は

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VteaおよびVwaterの値を代入してこれを変形すると

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両辺を積分してTwaterを求めるとt=0のときT=T0、Twater=Tw0より

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これを1つ目の熱バランス式に代入すると

が得られます。これを変形すると

となるのでこれを積分定数をC2として解くとTは

ここでt=0のときT=T0なのでC2は

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よってTは

と求まります。

(5)計算するだけの問題

これも問い(3)と同じくとにかく計算する問題です。

式(12)にT0=97 ℃、Tw0=27 ℃を代入すると

となって係数はフィッテングの式とよく一致します。フィッテングの式の時間tの単位が分であることに注意してフィッティングの式の指数部分を比較すると

が成立するのでKは

よって総括熱抵抗Rは

次に熱伝導抵抗Rλは式(9)から

式(8)および式(10)からh1=h2のとき、Rh1=Rh2が成立するのでマグカップから大気への熱伝達抵抗Rh2は、

よってh2は式(10)から

と求まります。

(6)マグカップの熱伝導抵抗の重要性について述べる問題

問い(3)の結果から、(a)の大気中で冷却した場合は総括熱抵抗Rのうちマグカップの熱伝導抵抗Rλの占める割合は小さいため、伝熱量を増やすことを考えるとそれほど重要ではないことがわかります。この場合は空気とマグカップの熱伝達の熱抵抗を下げる方が早く冷却することができます。この熱抵抗を下げる具体的な方法としては式(10)から伝熱面積を増やすばいいとわかります。放熱フィンもこれと同じ考え方ですね。もしくは大気中に強制的に流れを発生させて熱伝達率を上げてもいいです。

問い(5)の結果から(b)の水中で冷却した場合では総括熱抵抗Rの内、マグカップの熱伝導抵抗Rλが占める割合は(a)の場合よりはるかに大きくなり、支配的となっていることがわかります。なので、伝熱量を手っ取り早く増やして早く冷ますためにはこの熱伝導抵抗を小さくすることが重要となります。

小さくする具体的な方法としては式(9)からマグカップの厚さdを小さくする、より熱伝導率が高い材質のマグカップを使用するって感じです。

 

以上で解説は終わりです。最後まで読んでくれてありがとうございました。

 


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