今回は東大院機械工学専攻H17年の伝熱工学を解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・ステファン・ボルツマンの法則
・射出率
・熱エネルギーバランス
・ヌセルト数
・ニュートンの冷却法則
・射度
解答本文
H25年に発熱体と壁間の放射を考える設問がありましたが、それの類題です。
個人的にかなり難しい問題だと思ってます。
(1)放射による熱流束を求める問題
解答を書く前に使う用語の説明を軽くしておきます。
準備1(用語の解説)
①射出度
放射率ともいいます。射出度とは物体が実際に放出するふく射エネルギーをステファン・ボルツマンの法則で計算されるふく射エネルギーで割ったものです。一般的に0から1の値をとり、物体からの熱ふく射のしやすさを表すパラメーターです。射出度が1の物体を黒体といい、すべての入射エネルギーを吸収する特性を持っています。なので(1)ではエネルギーの反射を考えず単純に扱えたわけです。また、この物体が温度Tのときに放出するふく射エネルギーEはステファン・ボルツマンの法則より
となります。射出度の定義より射出度εの物体が温度Tの時に実際に放出するふく射エネルギーE'は
となります。
入射エネルギーのうち吸収される割合が射出率に等しくなっていることがわかります。物体表面の射出率が吸収率と等しいという法則をキルヒホッフの法則といい、局所熱平衡状態(空間的には温度が変化していて熱平衡にはないが、局所的な領域では熱平衡にある状態)で成立します。本問ではこれが成立するので使っていきます。
以上で準備は終わりにして解説していきます。
解答
平板0が実際に放出する単位面積・時間当たりのふく射エネルギーをE’として説明します。まず平板0が放出する熱流束E’を平板1がどれだけ吸収するかを考えます。
まず熱流束E’のうち平板1が
だけ吸収し残りの
を平板0に向かって反射します。このうち
を平板0が吸収し、残りの
を平板1に向かって反射します。これが延々と繰り返されるので平板が放射するE'のうち平板1が吸収する熱流束q01は
ここで0<ε0<1、0<ε1<1より
なので、式(2)には無限等比級数の和の公式
が適用できます。よってq01は
となります。ここでE'はキルヒホッフの法則より吸収率=放射率なので
これを代入すれば
平板0が吸収する熱熱束q10も同様に考えて
となります。以上より熱流束の式が示せました。
(2)平板1の温度T1をT0および輻射物性値を用いて表す問題
下図のように平板0を検査体積として熱エネルギーバランスを考えます。
検査体積内の熱量の時間変化は
熱バランス式は
(熱量の時間変化)=(熱移動による熱量の増加)
となるので
ここで、T0の昇温速度は一定でVTなので
これと既に求めたq01、q10を代入すれば
が成立します。これからT1は
(3)流路に流体を流した場合を考える問題
下図のように平板0の流路部分を除いた検査体積をとります。
ここで流路部分を拡大して示します。
平板の温度は均一かつ、一定なので流路の下側の板からも熱伝達が行われると考えます。
ここで流路幅dを代表長さとしてヌセルト数は
なので、熱伝達率hは
となるのでq/2は
と表せます。さらに検査体積内の熱バランス式から
これにq/2、q10、q01を代入すると
が成立するので、これよりT1は
となってT0、Tin、Toutが既知であれば推定できるとわかります。
(参考)別の方法で平板0が吸収する熱流束を求める
ここでは別の方法で平板0が吸収する熱流束q10-q01(ここではqとします)を求めていきます。その前に用語などの解説をしておきます。
準備1(用語の解説)
①射度
射度というのは単位時間・単位面積当たりに表面から発する全ふく射エネルギーです。
準備2(それぞれの平板の射度を求める)
平板0の射度をG0、平板0の射度をG1とします。
平板0から単位時間・単位面積当たりに発せられるエネルギーは、平板0の熱ふく射によって放出されるエネルギーと平板1から入射するエネルギーのうち反射する分となります。つまり、
(平板0の射度)=(平板0の熱ふく射分)+(平板1からの入射してくるエネルギー反射分)
となります。平板0の熱ふく射分は射出率の定義とキルヒホッフの法則から
次に平板1から単位時間・単位面積あたりに入射するエネルギーはG1と等しくなります。この反射分は
です。なのでG0は
となります。G1も同じようにキルヒホッフの法則を用いて熱ふく射分と反射分を考えると
となります。
準備は以上で終わりです。
等価回路を用いる方法
さっそく求めていきましょう。まず、この伝熱における等価回路は下図のようになります。
まずはR1について考えます。熱流束qは射度の式を用いると
となります。ここでG1は
なのでG0は
となり、これをqの式に代入するとqは
となります。よってR1は
と求まります。
次にR2を求めます。G1とG0の間の回路についての熱流束qを考えると
となるのでR2は
と求まります。
また、R3はR1と同様にすれば
と求まります。以上よりqは
以上で記事は終わりです。だらだらと書きましたが最後まで読んでくれてありがとうございました。
人気ブログランキング |
にほんブログ村 |