今回は東大院機械工学専攻平成25年熱力学の大問IIを解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・ステファン・ボルツマンの法則
・黒体
・強制対流熱伝達(平板)
・射度
・射出率
解答本文
東大院では珍しくふく射が出た問題です。正直ややこしかったんで出来はよくなかったんじゃねえかなと勝手に思ってます。また、下の記事で書いたような伝熱の等価回路が出ています。
(1)(a)等価回路の抵抗を求める問題
まずは発熱体と壁の間の伝熱について考えます。黒体の無限平板間を仮定しているので形態係数とかめんどいものを考慮しなくてもいいです。なので単純に発熱体と壁の間の伝熱量Qはステファン・ボルツマンの法則より
となります。等価回路を考えると電気回路におけるオームの法則のように
が成立します。発熱体と壁の間の温度ポテンシャルの差は図1-4の回路から判断すれば
なので上に示した伝熱量と、温度ポテンシャル、熱抵抗の関係より抵抗R1は
となります。
次に壁の熱伝導について考えます。壁の熱伝導による伝熱量Qはフーリエの法則より
となります。壁の熱伝導における温度ポテンシャルの差は
なので抵抗R2は
と求まります。
最後にフィンからの熱伝達について考えます。フィンからの熱伝達は層流による強制熱伝達によってのみ生じるので熱伝達によって放出される熱量Qはニュートンの冷却法則より
となります。フィンの熱伝達における温度ポテンシャルの差は
なので抵抗R3は
と求まります。
(1)(b)抵抗を用いて温度を表す問題
複数の抵抗が直列に接続されている場合の全体の抵抗は各抵抗の和になるので図1-4(B)の回路の全体の抵抗RBは
となる。よって図1-4(B)の回路において
が成立します。この2式よりTwは
となります。系全体は定常にあるため、これに図1-4(A)の回路において成立する
を代入すると
ここで
を用いると括弧の中の2項目が無視できてTwは
となります。
(1)(c)層流の強制熱伝達の知識が要求される問題
主流速度がU0の時の温度差Tw-T∞をΔTIとします。
なので式(1)がそのまま使えます。ΔTIは式(1)においてR2=R3とすれば
となります。次に主流速度が4U0の時の温度差Tw-T∞を考えましょう。この温度差Tw-T0をΔTIIとします。平板の層流熱伝達における平均ヌセルト数はレイノルズ数の1/2倍に比例します。なので主流速度が4U0のときの平均ヌセルト数はU0のときの2倍になります。これより平均熱伝達も2倍になります。このときR3は(1)(a)より1/2倍になるので
が成立します。これと式(1)よりΔTIIは
となるのでこの比を考えれば温度差は3/4倍になるとわかります。
(ちょっと一言)
上の解答でも言いましたが平板の層流熱伝達における平均ヌセルト数は
となりレイノルズ数の1/2乗に比例します。多分この問題はこれ知らないと解けないように思います。もしこれを知らないで解ける方法があったら教えてほしい。
一応平板とか円管くらいはヌセルト数の式を覚えておいた方がいいかもしれませんね。係数までは覚えられなくてもせめてレイノルズ数の何乗に比例するかとかくらいは把握しておいた方がいいかも。乱流熱伝達はさすがに出ないと思うけど平板や円管みたいな院試で出そうな設定における層流熱伝達の式くらいは知っておいた方がいいかもしれないです。
(2)(a)等価回路の抵抗を求める問題(難しめ)
準備1(用語の解説)
まず多くの人が射出度とか射度ってなんやねん!となると思うので用語について軽く説明しときます。
①射出度
放射率ともいいます。射出度とは物体が実際に放出するふく射エネルギーをステファン・ボルツマンの法則で計算されるふく射エネルギーで割ったものです。一般的に0から1の値をとり、物体からの熱ふく射のしやすさを表すパラメーターです。射出度が1の物体を黒体といい、すべての入射エネルギーを吸収する特性を持っています。なので(1)ではエネルギーの反射を考えず単純に扱えたわけです。また、この物体が温度Tのときに放出するふく射エネルギーEはステファン・ボルツマンの法則より
となります。射出度の定義より射出度εの物体が温度Tの時に実際に放出するふく射エネルギーE'は
となります。
②射度
射度というのは単位時間・単位面積当たりに表面から発する全ふく射エネルギーです。
準備2(射度Ghの式を説明)
Ghが
と表されると問題文に書いてありますがこれがどうしてかを説明しておきます。
まず、本問は(1)と違って黒体ではないので全部の入射エネルギーを吸収するわけではないです。つまり、下図のように本問の発熱体や壁は表面に入射したエネルギーのうちいくらかを反射するわけです。
これを踏まえたうえで射度の式を求めましょう。発熱体表面から単位時間・単位面積当たりに発せられるエネルギーは、発熱体の熱ふく射によって放出されるエネルギーと壁から入射するエネルギーのうち反射する分となります。つまり、
(発熱体の射度)=(発熱体の熱ふく射分)+(壁からの入射してくるエネルギー反射分)
となります。発熱体の熱ふく射分は射出率の定義より
次に壁から単位時間・単位面積あたりに入射するエネルギーは無限平板を仮定しているのでGwと等しくなります。
の式を見ればわかりますがこの反射分は
です。つまりこの問題の場合は入射エネルギーのうち吸収される割合が射出率に等しくなっていることがわかります。表面の射出率が吸収率と等しいという法則をキルヒホッフの法則といい、局所熱平衡状態(空間的には温度が変化していて熱平衡にはないが、局所的な領域では熱平衡にある状態)で成立します。
Gwも同じようにキルヒホッフの法則を用いて熱ふく射分と反射分を考えると
となります。
以上で準備は終わりにして解説していきます。
解答
まずR5を考えます。射度の意味から考えると明らかに伝熱量QはGhとGwを用いて
とできます。なので抵抗R5は
次にR4を考えます。Qは問題分に与えられているGhの式を用いて
と変形できます。ここで、またもや問題分に与えられているGhの式を用いるとGwは
となります。これを上の式に代入するとQは
となります。これからR4は
R6はGwが
となるからR4と同様にして
(2)(b)発熱体と壁どちらの射出度を下げるべきか考察する問題
伝熱量Qは
となります。これを元にこの問題について色々考えましたがわかりません。誰かわかる人教えてください。
(参考)別の方法で伝熱量Qを求める
伝熱量Q
を別の方法でも求めてみます。発熱体が実際に放出するふく射エネルギーをE’として説明します。まず発熱体が放出する熱量WLE’を壁がどれだけ吸収するかを考えます。
まず熱量WLE’のうち壁が
だけ吸収し残りの
を発熱体に向かって反射します。このうち
を発熱体が吸収し、残りの
を壁に向かって反射します。これが延々と繰り返されるので壁が吸収する熱量Qwは
ここで0<εh<1、0<εw<1より
なので式(2)には無限等比級数の和の公式
が適用できるのでQwは
となります。ここでE'は
なので
発熱体が吸収する熱量をQhとすると同様に考えて
となります。よってQは
となります。
以上で記事は終わりです。だらだらと書きましたが最後まで読んでくれてありがとうございました。
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