意識他界系大学院生のクソブログ

院試が終わったので体験談だったり解説をゆったりと書いていこうかなと思っています。院試関係ない日記も書きます。

伝熱と電気回路のアナロジー

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どうもSNです。今回の記事は

の最後で軽く触れた伝熱と電気回路のアナロジー(相似性)について書きます。いくつかの事例を出してその威力を体感してもらえたらいいなと思ってます。

 

 

院試での出題

東大院のH25年の大問II、H28年の大問IIに出ています。ぶっちゃけ知らなくても解けますが知っておいた方が電気回路?は?なんやこれとなりにくいので知っておいた方がいいと思います。あとH31年の大問IIの(4)も電気回路とかは出てきていませんがこれを知っていれば結論はすぐにわかります。

 

準備

まず、なぜ伝熱の様子を電気回路に置き換えて考えられるのかということを簡単に記しておきます。伝熱量を

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のように書くと電気分野のオームの法則によく似ている関係が成立していることがわかります。なので電気回路に置き換えて伝熱問題を考えることができるという感じ。後々の実例の時スムーズなのであらかじめいくつかの場合においての熱抵抗を求めておきます。

平板内の熱伝導(定常で発熱なし)

下図のように熱伝導率がλで厚さがdの平板内の熱伝導を考えます。温度分布は定常かつ発熱がないので直線となります。

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伝熱量Qはフーリエの法則より

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となるのでこの場合の熱抵抗Rは

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となります。

平板と流体間の熱伝達

下図のように流体と平板間で熱伝達が行われている場合を考えます。

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熱伝達率をhL、流体側の温度をTL、平板の流体側の温度をT1とするとニュートンの冷却法則より伝熱量Qは

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となります。よってこの場合の熱抵抗Rは

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となります。

円管内の熱伝導(発熱なしの定常、半径方向のみ温度分布)

下図のように熱伝導率λ、内半径r1、外半径r2、長さLの円管内の熱伝導を考える。

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この円管内の熱伝導における熱抵抗を求めていきます。なお、発熱はなし、定常で温度分布は半径方向のみとします。

ちょうどいい機会なので円管内の温度分布も導出しておきましょう。これは東大院のH30年にも出てます。案の定熱エネルギーバランスを考えるパターンです。

 

それではやっていきましょう。

まず、下図のように内径rで幅dr(drは微小)、長さLの検査体積を考えます。

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検査体積に流入する熱量を

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とすると、フーリエの法則よりQr

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となります。これより検査体積から流出する熱量はdrが微小であることから

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となります。これらがバランスするので

(流出する熱量)=(流入する熱量)

が成立します。上の式から熱エネルギー式は

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となります。あとはこれを解いていきましょう。積分定数をC1、C2として積分していくとTは

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これに境界条件r=r1でT=T1およびr=r2でT=T2を適用すると積分定数はそれぞれ

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と求まります。よってTは

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これより

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となりますね。ここで定常なので任意の位置で伝熱量は等しいです。なのでフーリエの法則より伝熱量Qを求めると

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となります。これより熱抵抗Rは

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実例

準備を踏まえたうえで以下では伝熱モデルとそれに等価な電気回路をそれぞれ示していきます。伝熱量を簡単に求めることができるということをわかってもらえたらなと思います。

積層平板の熱伝導

下に3枚の板が接合されている伝熱モデルとそれに等価な電気回路を示します。それぞれの平板内の熱伝導における熱抵抗は式(I)なので等価な電気回路の抵抗値はそれぞれ下図のようになります。

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抵抗は直列に接続されているので全体の抵抗Rtはそれぞれの抵抗を足し合わせればよく

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となります。よって伝熱量はT1,T4とこれを用いて

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となります。

熱伝達と熱伝導が存在する場合

下図に流体に挟まれている平板の伝熱モデルとそれに等価な電気回路を示します。それぞれの伝熱における熱抵抗は式(I)、式(II)より等価な電気回路の抵抗値はそれぞれ下図のようになります。

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抵抗は直列に接続されているので全体の抵抗Rtはそれぞれの抵抗を足し合わせればよく

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となります。よって伝熱量はTL,TGとこれを用いて

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となります。

熱伝達を含む積層平板

下図に流体に挟まれている積層板の伝熱モデルとそれに等価な電気回路を示します。それぞれの伝熱における熱抵抗は式(I)、式(II)より等価な電気回路の抵抗値はそれぞれ下図のようになります。

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抵抗は直列に接続されているので全体の抵抗Rtはそれぞれの抵抗を足し合わせればよく

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となります。よって伝熱量はTL,TGとこれを用いて

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となります。

積層円管の熱伝導

下図に積層円管の伝熱モデルとそれに等価な電気回路を示します。それぞれの伝熱における熱抵抗は式(III)より等価な電気回路の抵抗値はそれぞれ下図のようになります。

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抵抗は直列に接続されているので全体の抵抗Rtはそれぞれの抵抗を足し合わせればよく

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となります。よって伝熱量はT1,T4とこれを用いて

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となります。

(参考)抵抗の並列接続を含む場合

下に3枚の板が接合されている伝熱モデルとそれに等価な電気回路を示します。それぞれの平板内の熱伝導における熱抵抗は式(I)なので等価な電気回路の抵抗値はそれぞれ下図のようになります。

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赤の破線部分の全体抵抗Raは抵抗が並列に接続されているので

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となります。回路全体の抵抗はこれと残り二つの抵抗を足し合わせて

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よって伝熱量はT1,T4とこれを用いて

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となります。

 

 

以上で今回の記事は終わりです。最後まで読んでくれてありがとうございました。

 


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