今回は東大院機械工学専攻平成30年熱力学IIを解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・熱エネルギーバランス
・ニュートンの冷却法則
・ヌセルト数
・変数分離法(?)
解答本文
この問題は正直難しいと思います。僕も全体を通して自信がありません。
(1)と(5)は頻出の熱エネルギーバランスなのでそこは確実に解けるようにしておきたいかな。それ以外の設問には思いついたことをとりあえず書いておくみたいな感じでいいんじゃないかな。(6)以降はまったく解けなくても大丈夫だと思います。とりあえず自分なりの解答を記事として残しておくので参考にしておいてください。
(1)細線の熱バランスを考える問題
細線内の熱量の時間変化は細線の熱容量が小さいから無視できます。なので熱量の出入りだけを単純に考えていきましょう。まず、熱伝達によって細線から流出する熱量はニュートンの冷却法則より
です。これと内部発熱量
がバランスするので細線のエネルギーバランス式は
となります。これより細線の温度Tdは
(2)細線周りの流れを図示する問題
このときのレイノルズ数Reを計算すると
となるので、剥離などもなく渦も発生しない下のような流れとなります。
(3)センサーの動特性を論じる問題
流れの様子が統計的に平衡に達する時間τの範囲は
となります。これに数値を代入すると
となるのでこのセンサーは非常に高い追従性を持つとわかります。
(4)細線の温度変化の概略を図示する問題
問題文よりヌセルト数NuはCを定数とすると
となります。ここで(2)よりが15 m/sのときなのでRe=1なのでCは1となります。よってヌセルト数Nuとレイノルズ数Reの関係は
と表せます。ここで流速は
なので時刻tにおけるレイノルズ数Re(t)は
これよりこのときのヌセルト数Nu(t)は
これより熱伝達率h(t)は
これと問い(1)の結果から細線の温度Tdは
となります。これを図示すると下図のようになります。
(5)被覆材内の熱バランス式を考える問題
問題文にある通り内径r、幅dr、長さlの検査体積(下図の赤の部分)を考えます。
検査体積の体積Vは2次の微小量を無視すると
となるので熱量の時間変化は
検査体積に流入する熱量は
検査体積から流出する熱量は
検査体積の熱バランス式は
(熱量の時間変化)=(熱移動による熱量の変化)
となるので以上より熱バランス式は
となります。
次に境界条件を考えていきます。r=d/2における境界条件は細線内のエネルギーバランスを考えると
つまり
となります。r=D/2のときは熱流束について考えれば
r=D/2の方は簡単ですがr=d/2の方で「ん?」となる人もいると思います。細線の温度が与えられていれば境界面で温度が等しいという条件でいいのですが本問では与えられていないため細線内の熱バランスを考えました。
(6)ある程度時間が経過したときの細線の温度を求める問題
変数分離法から色々考えていきます。なんやねんそれというかたは偏微分方程式の参考書を読んでください。まずTを
と表せるものとして式(I)に代入すると次の2つの微分方程式が導かれます。
ここで、βは正の定数です。2つ目の微分方程式を積分定数をC1として解くとUは
となるのでTは
と表せます。これをtで微分すると
ここで、ある時間が経った時細線の温度がTdで一定になり、そこからはいくら時間が経過しても(つまりt→∞の場合でも)細線の温度はTdのままです。被覆材と細線は接触しているのでt→∞のときのr=d/2における温度TはTdとなります。つまり
が成立します。また、Tは有限値かつ0ではないので
において
となります。以上より
となります。これと式(I)より十分に時間が立ったときは
となるので被覆材の温度分布は一様となります。これと
から被覆材は全域で温度Tdとなります。このとき被覆材と細線を合わせた直径Dの円柱について熱バランスを考えると
が成立します。これから温度Tdは
と求まります。
(7)センサーの動特性を比較する問題
式(I)の項についてオーダーを考えます。まずは右辺について
これは式(I)からtのオーダーは
となります。これは(3)のセンサーと比較すればかなり大きなオーダーとなっていることがわかります。よって被覆材で被覆した場合の追従性は被覆しない場合と比較して低下するとわかります。
以上で解答は終わりです。最後まで読んでくれてありがとうございました。
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