意識他界系大学院生のクソブログ

院試が終わったので体験談だったり解説をゆったりと書いていこうかなと思っています。院試関係ない日記も書きます。

【院試解答】東大院機械工学専攻H19熱力学

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今回は東大院機械工学専攻平成19年熱力学を解説したいと思います。

ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。

なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。

問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。

 

 

問題を解くのに必要な知識

・オットーサイクル

・断熱過程

・等積過程

エントロピー

・分子運動の自由度と比熱比の関係

・熱エネルギーバランス

解答本文

ある状態における温度を求めさせたり、放熱量を求めさせたり…と熱力学の練習としては最適な問題だと思います。個人的に割と好き。

今では大問として出題されている伝熱がおまけ程度なのが時代を感じさせますね(?)

(1)各プロセスがどの準静的過程とみなせるか考える問題

プロセスⅠおよびⅢは外部との熱のやり取りがないので断熱過程、プロセスⅡでは容積が不変なため等積過程とみなすことができます。

(2)温度比を圧縮比と比熱比を用いて表す問題

プロセスⅠは断熱過程で

が成立するので温度比T2/T1は

と求まります。

(3)状態3におけるエントロピーを求める問題

プロセスⅡは等積過程なので、このプロセスでのエントロピー変化ΔSⅡは

となります。またこのプロセスにおいて熱力学第1法則から

が成立するのでT3は

これを式(Ⅱ)に代入すれば

なのでS3は

(4)T-S線図を図示してエントロピー変化について論ずる問題

ろうそくの炎が放出する熱量は注射器が受け取る熱量に等しいことからΔSは式(Ⅲ)を用いると

と求まります。

ここからT-S線図を用いてエントロピー変化について論じていきます。

まず、注射器と高温熱源のT-S線図を図示すると次のようになります。

注射器の曲線の下の色付き部分の面積は注射器が受け取る熱量の絶対値に等しくなります。また、高温熱源の直線の下の色付き部分の面積は高温熱源が受け取る熱量の絶対値に等しくなります。今回はこれらがQで等しいので色付き部分の面積は同じになります。

高温熱源は熱を失なっていることからΔS<0となるので色付き部分の面積について考えると

が成立します。よってΔSは

とT-S線図からもΔSを求めることができました。

(5)T4-T1をε,κ,cV,Q,mを用いて表す問題

プロセスⅢは断熱過程で

が成立するのでT4は

式(Ⅰ)、(Ⅲ)を用いて式(Ⅳ)を変形すると

なのでT4-T1は

(6)状態4を状態1に戻すプロセスについて考える問題

気体はプロセスⅡにおいて外界から熱を受け取っているので状態1に戻すためには放熱する必要があります。ここで容積はすでに状態1と同じなのでこれを保ったまま冷却してやればいいわけです。つまり等積冷却のプロセスが必要になります。

この際に注射器に出入りする熱量Q’は熱力学第1法則より

(7)We,Wcを求める問題

プロセスⅠおよびⅢは断熱過程なので熱力学第1法則からWcおよびWeは

ここでT4は

なのでWe/Wcは

となります。これは1より大きいのでWe>Wcとわかります。

(別解)

WcとWeは普通に積分して求めてもいいです。式を示しておくと以下のようになります。

(8)サイクルの熱効率を求める問題

サイクルの熱効率ηは

となります。

次に気体を変えたときに上で示した熱効率ηがどう変化するかを考えていきます。これを考えるうえで必要なのが分子運動の自由度と比熱比の関係です。分子運動の自由度をν、比熱比をκとすると

が成立します。これ東大院の熱力学ではちょくちょく使うので覚えておいた方がいいです。導出は統計力学の範囲なので気になる方は調べてみてください。

では、これを使って空気と二酸化炭素の比熱比を求めていきます。

空気はN2とO2の割合が大きいので二原子分子とみなせます。よって分子運動の自由度は5なので比熱比は

次に二酸化炭素は他原子分子なので分子運動の自由度は6です。なので比熱比は

これから二酸化炭素の方が空気よりも比熱比が小さいとわかります。ε>1なので熱効率ηは比熱比κが小さいほど低下します。なので流体を空気から比熱比の小さい二酸化炭素に換えると熱効率は低下します。

(9)熱エネルギーバランスを考える問題

熱エネルギーバランスを考えると

が成立します。これを整理して

次に積分定数をCとして両辺を積分すると

t=0のときT=T2よりCは

これよりTは

なのでTH-Tは

以上から

が成立するとき

が成立します。両辺の自然対数をとると

なのでtは

となるので与えられたln(0.1)=-2.3を用いればtは

と求まります。


以上で解説を終わります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 


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