意識他界系大学院生のクソブログ

院試が終わったので体験談だったり解説をゆったりと書いていこうかなと思っています。院試関係ない日記も書きます。

重ね合わせの原理のすゝめ②~例として京大院の問題を解く~

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 どうもSNです。だいぶ前に書いた記事

の続きです。本記事の目次は以下のようになります。

 

 

今回の記事の内容

前回の記事では重ね合わせの原理は使えるぞ!みたいなことを書いただけなので、今回は実際にこれを使って問題を解くことでいかに重ね合わせの原理が便利かということを示していきたいと思います。例題として京大院H31年の大問3の3-1、3-2を重ね合わせを用いて解こうかなと思います。ぜひこの記事を通して重ね合わせの原理の威力を体感していただけたらなと思います。

 

重ね合わせを使って問題を解く

今回は重ね合わせの原理で京大院のH31年の問題を2題解いていこうと思います。

前提知識

前回の記事でも示しましたけど下の表は全部頭に入れておきましょう。これが重ね合わせの原理を用いる場合の前提知識となります。

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問題の解答

3-1 片持ち梁の途中に荷重が作用している場合の問題

問題設定としては下図のように片持ち梁の先端ではなく、途中のある地点に荷重が作用している場合の先端のたわみとたわみ角を求める問題です。

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このような場合の先端のたわみおよびたわみ角を求める場合みなさんならどうしますか?

曲げモーメントを求めてたわみの微分方程式にぶち込んで境界条件から…とか、先端に荷重を仮定してカスチリアノの定理…とかやるのめんどくさいですよね。こんなことしなくても実は簡単に求める方法があります!

 

それをこれから示します。これを知っていれば重ね合わせの原理をフル活用することができるのでぜひ押さえましょう。

まず、下図のようにこの梁をCよりも右側にある地点(l-a<x<l)で切断します。

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そして、断面より右側にある部分でモーメントのつり合い考えるとCB間の曲げモーメントMxは0であるとわかります。つまり、この部分には曲げが発生しないということになります。これは感覚的にもすぐわかるとは思いますが、一応数式を用いても説明しておきます。たわみの微分方程式

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にMx=0を代入して積分すれば、CB間のたわみ曲線は積分定数をC1、C2として

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となることからもただちにわかります。これは明らかに直線なのでCB間は直線を保ったまま(曲がらないまま)梁はたわむということです。

丁寧に書いてきましたが実際に答案に書く際は「CB間では曲げが発生しないのでこの部分は直線を保ったまま梁は変位する」とか書いておけばいいと思います。

これらを踏まえると梁の変位の様子は下図のようにAC間は曲線、CB間は直線となります。

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これより先端のたわみyB、たわみ角θBはそれぞれ

yB=(C点でのたわみy1)+(CB部分のたわみy2)=(C点でのたわみy1)+(点Cでのたわみ角θ1)×(CB間の長さ)

θB=(点Cでのたわみ角θ1)

となります。ここでC点でのたわみy1とたわみ角θ1は長さl-aの片持ち梁の先端に荷重Wが生じたときの先端のたわみと等しいので、それぞれの値は上の表で示した公式より

f:id:bloodystream:20210507183650p:plain

となります。これを上の関係式

yB=(C点でのたわみy1)+(CB部分のたわみy2)=(C点でのたわみy1)+(点Cでのたわみ角θ1)×(CB間の長さ)

θB=(点Cでのたわみ角θ1)

に代入すればyB、θBはそれぞれ

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と求まります。この方法なら計算量も最低限で楽だと個人的には思いますがいかがでしょうか。

3-2 片持ち梁の途中に分布荷重が作用している場合の問題

3-1は前座でこっちが本番です。この問題の設定は下図のように片持ち梁の一部分だけに分布荷重が作用している場合の先端のたわみとたわみ角を求める問題です。

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見た瞬間からめんどくさくてやってらんねえ感じがしますが3-1と同じようにやればしっかりできるので安心してください。

ではさっそく解いていきます。まず、この問題を以下の2つの問題(i)、(ii)の重ね合わせと考えます。

 

(i)AD間に分布荷重wが下向きに作用する問題

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(ii)AC間に分布荷重が上向きに作用する問題

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重ね合わせの原理よりそれぞれの場合でB点のたわみとたわみ角を求めて足し合わせれば、たわみyBとたわみ角θBが求まります。

 

まずは(i)の場合のB点たわみy1とたわみ角θ1を求めましょう。DB間は曲げが生じないのでDB間は直線となる。これより先端のたわみy1、たわみ角θ1はそれぞれ

y1=(D点でのたわみ)+(点Dでのたわみ角)×(DB間の長さ)

θ1=(点Dでのたわみ角)

となります。ここでD点でのたわみyとたわみ角θは長さl2の片持ち梁の全長にわたって分布荷重wが生じたときの先端のたわみと等しいので、それぞれの値は上の表で示した公式より

f:id:bloodystream:20210507183812p:plain

となります。これを上の関係式に代入すればy1、θ1はそれぞれ

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となります。次に(ii)の場合も同様に考えればこの場合の点Bのたわみy2、たわみ角θ2は符号に気をつければそれぞれ

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となります。これを足し合わせればyBとθBは

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となります。以上で問題は終わりです。重ね合わせの定理の威力を体感してもらえたかなと思います。

 

おまけ(マクスウェルの相反定理)

マクスウェルの相反定理とは

最後にマクスウェルの相反定理というのを紹介しておきます。理屈は専門書に譲るとして問題3-1での先端のたわみyBは下図のような状況におけるC点のたわみに等しいという定理になります。

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一応正しいか確かめておきましょう。C点のたわみycはたわみ曲線の式

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にx=l-aを代入すれば

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となって3-1の答えと等しくなっていることが確認できます。3-1はこの定理を用いても解くことができます。

 

使用例

この定理は覚えておけば次のような問題をすぐに解くことができます。

 

中央(C点)が単純支持された長さ2aの片持ちはりの先端(B点)に荷重Pが作用しているときのC点における反力Rcを求めよという問題です。これは東工大のH18年に出題があります。

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まず、C点のたわみycは重ね合わせの原理より

yc=(荷重PによるC点のたわみy1)+(反力RcによるC点のたわみ)

となります。ここでたわみy1はマクスウェルの相反定理よりC点に荷重Pが作用したときのB点のたわみと等しくなります。よってy1は問題3-1と同様に考えて

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となります。次に反力Rcによる点cのたわみy2は長さaの片持ちはりの先端に荷重-Rc(たわみは下向き正としているので負になります)が作用したときの先端のたわみに等しいので

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となります。これらを足し合わせてycは

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となります。ここで、C点は単純支持されているのでyc=0とすればRcは

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と求まります。

 

 

この相反定理と重ね合わせの原理、あとは問題3-1のパターンを頭に入れておけば梁の問題の多くをパズルのように解くことができるので便利です。ですのでぜひマスターしておくことをおすすめします。長々と書きましたが以上で今回の記事は終わりです。最後まで読んでくれてありがとうございました。

 


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