今回は東大院機械工学専攻平成31年熱力学の大問IIを解説したいと思います。
ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。
なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。
問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。
問題を解くのに必要な知識
・熱エネルギーバランス
・フーリエの法則
・ニュートンの冷却法則
・熱通過率
・熱抵抗率
解答本文
フィンを題材とした問題です。(1)から熱バランスを示せという頻出パターンの極み問題です。やること自体は単純ですが一度経験しておかないと方程式を解くあたりでもたつくかもしれないです。
(1)熱エネルギーバランスを考える問題
丁寧に誘導で検査体積を設定してくれているので素直にやっていきましょう。
検査体積における熱移動は検査体積外部への熱伝達と内部での熱伝導の2つです。定常なのでこれらによる出入りの合計が0となるわけですね。
さっそく熱量の出入りを考えていきましょう。検査体積の左側の断面から流入する熱量を
とすると、検査体積の右側の断面から流出する熱量は
となります。検査体積の側面から熱伝達により流出する熱量はニュートンの冷却法則より
これらがバランスするので
(検査体積から流出する熱量)=(検査体積に流入する熱量)
が成立します。よって熱バランス式は
ここでフーリエの法則よりqxは
なので式(I)は
(2)微分方程式を解く問題
方程式を解くだけですがちょっと工夫が必要です。
とおくと式(II)は
となります。ここで
とおいて式(III)に代入すると特性方程式は
なのでこれを解くと
よって式(III)の一般解は積分定数をC1、C2とすると
となります。次に境界条件を適用して積分定数を求めます。境界条件はフィンの根本における温度がT0であることから
次にフィンの先端が断熱されていることから
ここで
なので以上の2つの境界条件より以下の2式が導かれます。
これらから積分定数はそれぞれ
となるのでθは
よってフィンの温度分布は
(3)フィン効率を求める問題
Qfは
Qf,idealは
なのでフィン効率ηは
(4)フィンがない場合の熱通過率、熱抵抗を求める問題
フィンがない場合の伝熱を考えます。これは非常に単純です。便宜上下図のように金属板の液体側の表面の温度をT1、気体側の表面の温度をT2としておきます。
すると伝熱量Qは
と表せます。上の式を変形すると
上の3式をすべて足し合わせると
となります。熱通過率の定義よりKは
と求まります。次に熱抵抗は定義より
となります。これをいくつかの熱抵抗の和として表すことを考えます。ここで液体から金属板への伝熱における熱抵抗をR1、金属板内部の伝熱における熱抵抗をR2、金属板から気体への伝熱における熱抵抗をR3とすれば、熱抵抗の定義よりそれぞれ
となるのでRtは
(5)フィンがある場合の総括熱抵抗を求める問題
フィン表面からの実際の伝熱量Qfはフィン効率の定義より
フィン根本以外の面積A0からの伝熱量Q'は
これらの合計が金属から気体への伝熱量Qとなるので
これをT0-TGについて変形してそのあとは(4)と同様にすると
となります。よって総括熱抵抗Rtは
となります。(3)のフィン効率はフィン内の温度分布が存在しない理想的なフィンに対して、実際のフィンがどれだけ伝熱量を増やせたかという割合を表しています。理想的なフィンの伝熱量にこの効率をかければ実際のフィンによる伝熱量の増加がわかって便利なため実際の設計でも(3)のフィン効率が使われているんじゃないですかね。知らんけど。
以上で解答はおわりです。参考として伝熱と電気回路の相似性(アナロジー)に軽く触れてこの記事を終わります。
参考(伝熱と電気回路のアナロジー)
そのうち記事にするつもりですがちょうど良い機会なので軽く触れておきます。
(4)の高温の液体から低温の気体への伝熱量Qは
となり、この式の分母の総括熱抵抗はそれぞれの伝熱における熱抵抗の和になっていましたね。これは伝熱における伝熱量を電気回路と同じように考えることができるという知識があれば計算するまでもなくすぐにわかります。伝熱量を
のように書くと電気分野のオームの法則によく似てることに気が付くと思います。このように電気回路と伝熱にアナロジーがあることを知っておくと便利です。今回の(4)の伝熱モデルに対しては下図のように等価な電気回路を書くことができます。
抵抗が直列に接続されているときの全体の抵抗はただ単に抵抗を全て足すだけでしたね。なので(4)のように
となったというわけです。
(2021/5/10追記)
↓伝熱と電気回路のアナロジーを記事にしました
というわけで今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくれてありがとうございました。
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