今回は東大院機械工学専攻平成24年材料力学の大問Iを解説したいと思います。 ガバガバなところがあったり間違っているかもしれませんが解答の参考にしてください。 なお問題をそのまま載せるのは権利の都合上まずいと思うので載せません。 問題が欲しいという方はコメントするかtoriatama321@gmail.comに連絡してください。それではさっそくやっていこうと思います。
問題を解くのに必要な知識
・ひずみと応力の関係
・熱応力
・梁の曲げ応力、ひずみ
・組み合わせ梁
・梁の断面に生じるせん断応力
解答本文
(1)(a)引張荷重と温度上昇による変形を考える問題
引張と温度変化によるひずみをそれぞれ導出して足せばいいだけの基本問題ですね。引張荷重Pによる棒の伸びは梁の断面積をAとすると
なのでA=bhを代入すれば
となります。次に温度上昇Tによる伸びは
なので梁のひずみはこれらの合計を長さで割って
となります。
(1)(b)はりのたわみ、ひずみを求める問題
下図のように梁の左端をA、右端をBとおき、右向き正のx軸と下向き正のy軸を導入します。
また 、AとBに生じる反力をそれぞれPA、PBとします。
力のつり合いより
A点周りのモーメントのつり合いより
なのでこれらよりPAとPBは
となります。次に座標値xの断面に生じるせんだん力および曲げモーメントをそれぞれFx, Mxとすると、下図の断面より左の部分について力のつり合いとモーメントのつり合いを考えればそれぞれ
となります。
よって断面二次モーメントをIとするとたわみの微分方程式は
となります。ここで境界条件
を適用してC1, C2を求めると
となるのでたわみ曲線は
とり、中央部のたわみycはx=l/2を代入して
と求まります。これに
を代入して
と最終的な答えが求まります。
次にひずみを求めます。梁の断面に生じる曲げ応力は
となるので座標値yの位置でのひずみは
となります。この問題においてはx座標の値によらず曲げモーメントは
なのでひずみのy方向の分布はx方向によらず
となります。これにy=±h/2を代入してひずみをそれぞれ求めると
となります。
ここまでは非常に基本的な内容なのでスラスラ解けなきゃまずいですね。(2)からはちょっと計算量も含めてレベルが上がりますが(b)までは解きたいところです。(c)はちょっと厳しいのでは?って思います。本番だったら捨てて他の問題やった方がいいでしょう。では(2)もやっていきます。
(2)(a)梁の断面に生じるせん断応力と中立線の位置を求める問題
まず断面のせん断応力を求めます。
下図のように梁から長さdxだけ切り出したその図形を中立面からの座標値がyの位置の断面で切断し、その断面より下側の部分(下図でグレー色の直方体となっている部分)について力のつり合いを考えます。
また便宜上梁の中立軸から下向きにη軸を導入します。横断面にはたらくせん断応力τはせん断応力の共役性により断面E'F'G'H'に生じるせん断応力と等しいので、はりの上面からの中立面までの距離をeとすると切り出した部分についてのx軸方向の力のつり合いより
が成立します。
これよりτは
となります。ここで(1)(b)より両端に曲げモーメントのみが生じるときは断面に生じる曲げモーメントの値はxの値によらないため応力も式(3)よりxの値によらないことがわかります。よって式(3)と式(4)より本問では断面のせん断応力は位置によらず0となります。
これを図示せよとのことですが0ですし省略します。これ0だっていうのはここまで丁寧にしなくてもわかるんですがもし本番にこの問題出たら図示せよって言ってるし罠があるかもしれないと焦りそうですね。院試はこういう性格悪いことやってくるので受験する皆さんは惑わされないようにしましょう。
次に中立線の位置を求めます。曲率半径をRとすると中立面からyの位置でのひずみは
と表せます。この問題では両端には水平方向には力が生じないので断面全体では力が0になっていなければなりません。よって水平方向の力のつり合いを考えると
が成立します。これを頑張って計算するとeは
と求まります。
(2)(b)組み合わせ梁のたわみを求める問題
組み合わせ梁のたわみの微分方程式は式(1)のEIをEAIA+EBIBに置き換えればいいだけです。ただしここでIA, IBはそれぞれ梁A、梁Bの断面二次モーメントです。よって中央部のたわみは式(2)のEIをEAIA+EBIBに置き換えて
となります。ここでIAとIBを一応eを用いて表しておくと
となります。eを代入する気力はないので興味あったらやってみてください。
(2)(c)バイメタルの問題(個人的には捨て問)
この問題ははっきり言って捨てた方がいいんじゃね?って思いますが一応自分なりに作成した解答を書いておきます。合ってるかは知らないですが参考にしてください。
まずはなんで題意のように曲げモーメントや荷重がそれぞれの梁の断面に発生すると考えられるのかについて考えていきましょう。
もし2つの梁が接合されていなければ熱膨張の違いにより温度が変化すると梁A, Bは熱膨張して長さの違いを生じます。しかし実際には2つの梁は接合されているので接合面では両者の長さは等しくなりますね。これが起こるためには接合によって梁に熱膨張以外の変形が生じる必要があります。つまり接合されている梁では熱膨張とは別に弾性的な変形が生じ、これらの変形量の合計が等しくなっているということになります。
この理由から横断面に垂直応力と垂直応力によるモーメントが生じ、これによって梁A, Bはそれぞれ曲率半径RA, RBの円弧に婉曲するという(c)の状況が出来上がるというわけですね。
垂直応力の合力がP、これによるモーメントの合モーメントがそれぞれMA, MBというわけです。
問題設定を理解したところでさっそく解いていきましょう。まず接合面における熱による変形、荷重による変形、曲げによる変形をそれぞれ考えていきましょう。
熱応力によるひずみは
引張荷重によるひずみは
曲げによるひずみはy/Rを用いると
となります。これらを用いると接合面におけるひずみに関する等式は引張を正として
となります。ここで曲率半径RA, RBの円弧に湾曲するために必要な曲げモーメントはそれぞれ
です。この問題では外力は作用していないため2つの梁の横断面に作用するモーメントの合計は0でなければならないので
が成立します。ここで各層の厚さは非常に小さいと考えれば
が成立するのでこれらと
を用いて曲率1/Rについて解くと
となります。
これで曲率1/Rを求めることができたのでこれを用いてたわみを表せられればいいわけですね。そこで下図のように長さlの両端を固定されている梁が曲率半径Rの円弧に湾曲している場合を考えると中心部のたわみyは
となります。
ここで変形が微小なときは
が成り立つのでyは曲率1/Rを用いて
と表せます。これに式(5)の曲率を代入すれば答えは
と得られます。
以上で解説は終わりです。クソみたいに重い問題でしたが最後の(c)以外は計算量はともかく内容自体は理解しておく必要があると思うので何度も繰り返し手を動かしてマスターしておいてください。それでは以上でこの記事は終わりです。見てくれてありがとうございました!
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